法令ノート/民法_債権各論/同時履行の抗弁権

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§533の立法趣旨	(1)当事者の公平 (2)当事者の合理的意思 (3)簡易迅速な取引の要請
要件	(1)両債務が同一の双務契約から生じ
	(2)両債務に対価性があり
	(3)相手方の債務が弁済期にあるのに
	(4)相手方が自己の債務の履行（提供）をせずに履行を請求すること

§533の適用			(理)
1	敷金返還と賃借物の明渡
2	弁済と受取証書または債権証書の交付[469]	○ (類推適用)	かかる二つの義務に対価的均衡があるわけではない。しかし債券証書が返還されないと後で二重弁済を強制される危険がある。
3	契約の無効･取消による当事者相互の返還義務 [470]	○ (類推適用)	双方の義務は双務契約によって発生したわけではない。しかし同様に当事者間の公平を図る必要がある。しかもかかる義務は本来は一個の法律関係から生じたものである。
4	建物買取請求権の行使による代金支払と借地の引渡[471]	○ (類推適用)	① 建物買取請求権の行使により売買と同様の効果が発生する。さらに、 ②建物明渡義務がないから、反射的に土地についても明渡す義務はない。
5	造作買取請求権の行使による代金支払と建物の引渡 [472]	×	造作は取り外しが可能である。 ↓∴ 取り外して同時履行を主張すればよい。
CF	造作の引渡と代金支払い	○

*売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、
 同時履行の関係にある（昭47･9･7）

*家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡し債務と賃貸人の敷金返還債務とは、
 特別の約定のない限り、同時履行の関係に立たない。（昭49･9･2）

*債務の弁済と該債務担保のための抵当権設定登記の抹消登記手続とは、
 前者が先履行の関係にある(同時履行の関係に立たない)（昭57･1･19）

*貸金債務の支払い確保のため、小切手が交付された場合、特別な事情のない限り、
 債務者は、小切手の返還と弁済との引換え履行を主張できる（昭33･6･3）

*同時履行の抗弁の提出があったときは、裁判所は、請求を全部排斥することなく、
 双方の債務の履行と引換えに相手方にその履行を命ずべきである（明44･12･11）

*執行裁判所は、債権者が反対給付を履行し又はその提供をしたことを証明書をもって
 証するのでなければ、強制執行に着手することはできない（大5･8･10）

*双務契約において相手方が債務の履行を提供しても他の一方が債務を履行しない意思が明確な場合には、
相手方が債務の履行を提供しなくても、他の一方はその債務不履行につき違約の責を免れない。（大3･12･1）

*同時履行関係にある場合には､反対給付の提供なき催告に基づく契約解除は無効（昭29･7･27）

*双務契約当事者の一方は、相手方から履行の提供があっても、
 その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失わない（昭34･5･14）

Ｑ受領遅滞に陥った後改めて履行を請求する際に同時履行を主張できるか
→主張できる (同時履行の抗弁権を奪うには改めて債務者は履行をなす必要がある)
(理)
同時履行の抗弁権の主張を否定するならば、
受領遅滞後相手方が無資力になった場合債権者に酷な結果を招く。

Ａが商品引渡について先履行義務を負うがＢは履行期に無資力になった。
債務者は債権者に反対給付履行についての保証を要求でき、
その保証がないうちは履行を拒める
(理)
無資力の債権者が債務者に履行を強制することは信義則に反する。