法令ノート/手形･小切手法/満期後の法律関係/支払免責

Ⅰ 満期における支払(§40-3) †

(1)満期において	Ｑ本条が適用される支払の時期【152】
(2)支払をなす者が	Ｑ免責を受ける者の範囲【153】 ① 約束手形の振出人 ② 遡求義務者 ③ 支払担当者(§4)(類推適用)
(3)悪意重過失なく	Q 悪意重過失の対象【155】～【157】 (原則)→無権利であることを知り + その証明が容易であること (理) 裏書の連続ある手形の最終の被裏書人は権利推定される(§16-1) ↓∴ 手形訴訟に移行した後、敗訴の可能性が大きい。にもかかわらず単に無権利であると知っている(悪意)のみで免責が認められないならば酷な結果を生じる。 (例外)権利推定が及ばない事項については、 →通常の悪意・重過失 (理)上のような敗訴の危険がない
支払ったこと

(1)約束手形の振出人(為替手形の引受人)､遡求義務者に対して
(2)支払人､支払担当者に対して【157】

ケース	適用範囲
ケース	支払免責 (§40)	善意取得 (§16-2)
① 所持人が無権利者である	○ (本来的適用)	○ (前主の無権利を治癒)
② 最後の被裏書人と所持人が同一人でない	○ (拡張的適用) (理) 振出人は支払を強制(義務づけ)されている。 ↓∴ 振出人を保護するために免責の適用範囲を広く捉える。	(理) 手形を受け取るか否かは、強制されていない
③ 所持人が無権代理人である
④ 所持人が破産(支払受領権限喪失)した
⑤偽造手形の支払	×【158】

(問題所在)
満期前においては無権利者に支払った場合には免責されない)(§40-2)
ところが、
この者が戻裏書によるならば、形式的には善意取得の規定(§16-2)が適用される。
とすると、このような結論は不均衡である。
そこで、

Q1 善意取得制度(手§16-2)を類推適用できないか
①肯定説(弥永)(前田)
②否定説(通説) (理)これを認めると§40-2の潜脱となる

Q2 不均衡を是正するにはどうすればよいか
→戻裏書による場合も善意取得(手§16-2)が適用されないとする【243】

	｢支払をなす者｣	支払を求める者	悪意･重過失の意味	根拠条文
満期前	振出人	①無権利者 ②最後の被裏書人と非同一 ③無権代理人 ④破産(支払受領権限喪失)	通常の意味 ↓ 知っていること(悪意) 不知につき重過失	§16-2 (類推適用)
満期後	振出人遡求義務者支払担当者	①無権利者	通常の意味 + 容易に立証できるのに故意に支払を拒まない拒まないことに重過失	§40-3
満期後	振出人遡求義務者支払担当者	②最後の被裏書人と非同一 ③ 無権代理人 ④ 破産(支払受領権限喪失)	通常の意味	§40-3 (拡張適用)