法令ノート/刑訴法/証拠/自白補強法則

３.証明力 -自白補強法則(§319-2,3) †

◇ 立法趣旨(補強法則とは何か)
→被告人を自白だけで有罪とすることはできず自白にはこれを補強する証拠が必要とされる法則

1 補強を要する事実の範囲(Ｑいかなる範囲の事実につき補強が必要か)
→自白の真実性を担保する証拠があれば、罪体の一部に関する証拠で足りる
(理)
罪体の一部についてたまたま補強証拠がないと無罪となる結果は不都合である

→法益侵害が犯罪行為に起因すること(判)

罪体説と実質説との関係

2 補強の程度 (Q 補強証拠の証明力としてどの程度の証明が要求されるか)
→ 自白と相まって犯罪事実の認定ができればよい
(理)
補強証拠が要求される範囲と自白の証明力との関わりはないから、
補強証拠に単独の証明力を要求する必要はない

→自白から独立して、補強証拠自体で一応の心証を抱かせる程度の証明(判)

3 補強証拠適格
→① 証拠能力があり

 ② 被告人の自白から独立していること

Q 被告人自身が記載した帳簿に補強証拠適格があるか
→肯定
(理)
商業帳簿は機械的に記載され、客観的事実に照応するものであるから、
これを認めても、自白強要防止など補強法則の趣旨に反しないし、
証拠能力を否定すれば、実体的真実に反し不当な結論を招くからである。

◇ 公判廷の自白についても補強証拠は必要か
Ｑ公判廷における有罪である旨の陳述は、補強証拠が必要な自白（）にあたるか。(憲法38条は、公判廷の内外で区別がない。)

(理)
公判廷の陳述は拘束・陳述義務がないから、発言の証明力は高い。
さらに、裁判所による被告人の態度の観察、質問権行使によって公正さが担保される。
したがって、かかる陳述は憲法の保障が及ぶものではない。

刑訴法が補強証拠を必要とする（§319-2）のは、憲法の趣旨が拡張されたものである。

4 共犯者の自白(供述)の場合の規制

補強証拠能力
Q 供述は共犯者との関係で自白ではないが、かかる供述に補強法則を拡張すべきか
(共犯者の供述は、被告人の自白の補強証拠たりえないか)
(共犯者の供述を相互に補強証拠として被告人を有罪とできないのか)
→否定
(理)共犯者は第三者であるし、補強証拠は自由心証主義の例外であるから厳格に解すべき

但し、
他の証拠がないのに被告人の有罪の確信が得られるのはまれであり、
裏付け証拠がない認定は不合理な認定であることが通常である。

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