法令ノート/刑訴法/基本原理

Ⅰ 適正手続主義 (VS 実体的真実主義) †

Ⅱ 当事者主義 (VS 職権主義) †

１定義 → 両当事者が対等の立場で攻撃防御をつくすという建前
訴訟追行過程において当事者たる検察官・被告人が主導的役割を担う訴訟構造

２根拠
① 憲§31
② 訴因制度（§256-2・3）
③ 起訴状一本主義
④ 黙秘権の保障
⑤ 証人喚問権
⑥ 証拠提出権の保障

② 被告人に反対尋問権が保障（憲§37-2、§320）されていること

実質的根拠
憲§37-1は刑罰権による不当な人権侵害から刑事被告人を保護すべく公平な裁判所であることを要請している。
しかるに
訴訟追行過程において裁判所が主導的役割を担うとすれば公平な裁判の要請が充たされない。
そこで、法は当事者主義的訴訟構造を採用している（§256-6、§298-1、312-1）

ｑ当事者主義をとると真実発見が困難となり実体的真実主義と矛盾しないか
ｑ職権主義は刑事裁判に本質的なものか

３現行法上の問題点
(1) 訴因変更命令
(2) 職権証拠調
(3) 公判期日の指定(証拠調べの順序･方法の決定を裁判長の権限としていること)

Q 以上は当事者主義と矛盾しないか

当事者主義の限界
①アレイメントは否定されているし（§319-3）
②検察官の訴追裁量も全くの自由ではない。
理由
刑事訴訟の主題が国家刑罰権の問題である上に、
裁判所の監視によって適正手続きの保障を実現する必要があるから。

４当事者主義の定義再論
(1) 形式的当事者主義(当事者追行主義･弁論主義)
(2) 実質的当事者主義(デユープロセスとしての当事者主義)

Q いずれと解すべきか

争点
実質的挙証責任の分配論
証拠開示
被告人に不利な訴因変更ができるか
職権証拠調べ義務
§328｢弾劾証拠｣の範囲
被告人は自由な証明で足りるか

↑

§１の解釈 †

刑事訴訟法の目的として、実体的真実主義の実現があげられる。
かかる建前は、適正手続（憲§31）との調和の観点から考えるべきである。
したがって、
その内容は、無辜の者を一人も処罰しないという消極的実体的真実主義を指す。

↑

Ⅲ 公平な裁判 †

１．意義 ⇒ 組織・構成上、偏った裁判をするおそれのない裁判所
(理)
「公平な裁判所」(§37-1)の裁判を受ける権利を保障した趣旨は
適正手続を保障し、法の支配を実現するためである

２．担保する制度
(1)裁判所の構成として →除斥・忌避・回避の制度により、裁判官の公平な判断の保障を図っている。

Q 忌避事由は ⇒ 当該事件の審理過程に属さない要因によるものをさす。(訴訟手続における態度・方法は忌避事由にならない)
(理)
①現実には、これで十分制度趣旨は実現できるし、
②忌避事由を広げると、制度の濫用のおそれがあるからである。

(2)訴訟手続の構成として ⇒ 予断排除の原則
具体的には、
①起訴状一本主義（§256-6）がとられ、書類の添付・書類の引用が禁止される。
②第一回公判期日前の勾留に関する処分は受訴裁判所は行えない（§280）、
③検察官の冒頭陳述についての制約が課せられる（§296条但）

予断排除の原則(憲§37-1) [#mf2d8559]

２採用根拠

３内容(これを担保するためにどのような制度が用意されているか)

(1)	裁判所の構成自体	→	忌避･回避･除斥
(2)	起訴時	→	① 訴因制度 ② 起訴状一本主義
(3)	起訴後	→	① 公判構造の当事者主義化
			② 証拠調べ手続	§301 (証拠となる書面の規制 ) §302 (自白の証拠調べ)

↑

Ⅳ 無罪推定の原則 †

⇒ 被告人は有罪の判決があるまでは無罪と推定されるとの建前(憲§31)

訴訟手続上のこの原則の現れ
(1)捜査段階	捜査構造令状主義
(2)公訴提起時	犯罪の嫌疑は公訴提起の要件か起訴状一本主義
(3)公判段階	証拠裁判主義客観的挙証責任
(4)再審段階	｢証拠の明白性｣の判断に影響するか

↑

Ⅴ 訴訟行為論 †

戻る